『好きなら好きっ!』

Posted at : 2007年 / 10月 / 15日


なんかむしょうに聴きたくなって中古盤を購入。100えん。

当時絶好調アイドルだった遠藤久美子、98年のデビューCDである。

そのころはまだ日本の芸能界にギリギリ、少女アイドル文化が
生き残っていた時代で、わしは中野の歌姫憧夢に通っては、
報われないマイナーアイドルのCDシングルなど買い漁っていた。

遠藤久美子はアイドルとしてはややデビューが遅かった(19歳
くらいだったと思う)ものの、天真爛漫な下町キャラクターと
クッキリした顔立ちでブレイク、わしも写真集を買ったりして
いたが、なぜかこのデビューシングルには手を出さなかった。
どうも楽曲に萌えを感じなかったとゆーか、ピンと来なかったのだ。

このシングルから一年ほどたって、畏友・秋葉鮫氏から強硬な
推薦を受け、一本のゲームを買った。『キャプテン・ラヴ』
という、PS用の恋愛シミュレーションだ。


このゲーム、人によって「バカゲー」とも、「傑作」とも言われる
が、いずれにしても大してヒットはせず、アキバではすぐにワゴン
セールの定番に落ちてしまった。

主人公は「愛の共産化」を推進する「ラブラブ党」に入党し、
まあ「稲中」の恋愛死ね死ね団のような活動をするのだが、
書記長の娘に一目ぼれしてしまい、やむなく愛のヒーロー
「キャプテン・ラヴ」に身をやつし、「ラブラブ党」の刺客
たちと戦う、というのが基本設定。また戦いというのが
格闘技や超能力でなく、三択で最適な屁理屈を選んで相手を
論破する「論撃バトル」というあたりも含め、まあバカゲーっぽい。

東芝が発売元であったせいで、当時東芝EMIイチオシだった
遠藤久美子がメインヒロインの声をアテているのも、ヲタたちが
ソッポを向いた原因と思われる。よりにもよって、当時のアイドルの
中でもとびきり声が低くてガサついているエンクミをギャルゲーの
ヒロインに起用してしまうというのも、まだ業界の景気がよくて、
とりあえず出しちゃえという気風があった時代ならではだろう。

実はわしは、そんなにエンクミボイスは嫌ではなかった。
ギャルゲーの主人公といえば判で押したような甲高いキンキン声、
というお約束にウンザリしていたせいもある。さらにいえば、
ゲームを進めるほど、違和感がなくなってくるのである。
このガサガサ声が。

主人公はなんだかんだと論撃バトルの末、ヒロインと結ばれる。
だが、実はここまではストーリーの半ばである。主人公はヒロインと
同棲を始めるのだが、学生でカネもないから、ボロアパート暮らし
である。一緒に暮らすうちに、いろんなしがらみを感じるようになる。
理想の女の子と思っていたヒロインのイヤなところも見えてくる。
童貞少年の夢とは正反対の、実に生臭い「恋愛」の現実が現れる。
今まで異性を意識したことのなかった女友達が、いつの間にか
気になってくる。三角関係がドロドロしてくる。

この「実際の恋愛ってこんなもんよ?」というヒネクレまくった、
だがよく練られたシナリオに、天性の天邪鬼であるわしや鮫氏は
がっつりとハマった。そして「恋愛の面倒くささ」をズルズルと
引きずる架空のヒロインに、エンクミの生活感のある声は実に
フィットしていた。

そしてそんなドロドロを潜り抜けて到達したエンディングに再び
流れるのが、OPにも使用されていた「好きなら好きっ!」だ。

ただのシングル曲として聴いた時にはさっぱり心に届かなかった

「♪好きなら好きって言わなきゃダメ 私がしっかりしなくちゃダメ」

というフレーズが、まるでこのラストのために誂えられたように
響いた時は、軽い感動さえ覚えたものだ(ちなみに作詞はエンクミ
本人である)。

果たして、これはもともとゲームとシングル曲が企画段階から
タイアップされていて、まあお馴染みの製作進行の遅れから
ゲームだけが一年も後に発売されることになってしまったのか、
それとも何も考えずに突っ込んでみたら、たまたまシナリオに
ばっちり合ってしまった、いわゆるゴッドアングルだったのか、
今となっては誰にもわからんし、わし以外興味もないだろうが、
わしの中ではこのヘンなゲームのおかげで、エンクミデビュー曲は
「90年代報われない名曲」リストの中に入ったというわけである。



『好きなら好きっ!』
作詞:遠藤久美子 作曲:U-ki 編曲:U-ki・村田陽一
(東芝EMI TODT-5148) 98年4月8日発売

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