『つぼみ』vol.1

Posted at : 2009年 / 02月 / 16日


なんかアマゾンでは初版完売で、中古価格がえらいことになってます。
いや、とらのあなとかには今日も普通に積んでありますけどね。

今まで一迅社を中心につつましく展開していた百合マンガ界に
4コマの雄・芳文社が殴り込み。中短編アンソロジーとしては
異例の300頁を超える厚さもアツいっす(結果、紙質はちょい
落としてます)。

ネットレビューでは「エロ多い」みたいな記事も散見されましたが、
いやいやとんでもない。わしなんか、読了してなんか反省しちまい
ましたよ。こう、知らず知らずのうちに、わし「百合」というものに
勝手にタガを嵌めていたんじゃねえかと。そろそろ手垢のつき始めた
「百合マンガ」に、まだこんなにも豊かな着想と表現の多様性が
残っていたのかと。これはもう編集の手腕の卓越ぶりに脱帽というか。

巻頭の森永みるくとか、巻中のはっとりみつるあたりはいつもの
プチエロな感じで、これはこれでいいですな。

やや長めの作品が掲載されてる、きぎたつみと大朋めがねは共に
志村貴子調のタッチ。ほろ苦い青春の一コマをドライに描いた好編。
大朋めがねは18禁マンガでも知られる人だけど、軽みのある諧謔の
センスも志村っぽい。

宇河弘樹『コブリアワセ 上編』は、まだ古い風習が残る戦後まもない
家を背景に、重く細密な作画で昭和前半の空気を描き出す。もはや
百合も萌えも超越した純文学の世界。しかしどうなる後編。そして
帯の「ALL読み切り」に偽りアリ( ̄▽ ̄)

きづきあきら+サトウナンキの中編『エビスさんとホテイさん』は、
線が太くポップな絵柄で、大企業OLのインシツな生態をやたらと
リアルに描きつつ、大人の百合ドラマを提示。あっ、これも
「第一話」だって。続編に期待。

巻末の水谷フーカ『この靴知りませんか』は、病院で靴を取り違えた
ことから生まれる不思議な出会いをユーモラスに描く。出会えそうで
出会えない二人、というもどかしい物語を、ほぼ全編、ヒロインの
ひとり芝居で見せるという、海外のしゃれたショートショートの
ような構成が素晴らしい。小道具が「靴」ってのもいいですよね。
オトコとオンナでは成立しない、女の子同士だからこそ成り立つ
道具立てなわけで。達者な画力はもとより、こういう嫌味のない
文学性をたたえた作品できっちりとシメるあたりに、編集の
並々ならぬ力量を感じちまうわけです(あっ、スミマセン、ほんとの
巻末は吉富明仁のロリマンガでした。印象薄くて、ついwww)。

逆に、これまでの同人系・BL系作家を集めた百合マンガにありがち
だった、ウェットな叙情を主体にした作品はごく少数で、これまた
既存のマンネリ化しつつあったアンソロへの強烈なアンチテーゼとも
受け取れます。「百合ってな、もっといろんな切り口があっても
いいんじゃない」という。一介の百合バカとしても考えさせられる
一冊でありました。


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