『Defamation』

Posted at : 2010年 / 11月 / 20日

「松嶋×町山未公開映画を観るTV」で先週、今週と放送した
ドキュメンタリー映画『Defamation』、おもしろかったなー。


一昔前、ホロコーストについてちょいと挑発的なことを掲載した日本の
出版社が、早速イスラエル様の逆鱗に触れ、編集担当者がわざわざ
サイモン・ウィーゼンタール・センターに引っ張られて「再教育」
される、という一件がありまして、以来わしの中でも個人的にずっと
「ユダヤ人差別ってナニ?」という疑問がありました。

ぶっちゃけ、あの人たちって、今は言うほど苦労してないし、
パレスチナでもムチャクチャやってるし、でもそのこと口に出すと
なんかおっかない圧力団体みたいのが飛んできて「差別主義者」と
ぶっ叩かれるからみんな黙ってるんでしょ? アメリカ政府も
基本的にイスラエルの味方だし。

・・・という、世界中の人が思ってるし知ってるけど、口に出せない
でいた疑問を、当のイスラエル人である映画監督がトコトン取材し
暴露しまくったスゲエ映画。

アメリカに本部を置くADLという団体がこの作品の主役。
世界中で行われている(と彼らが主張する)反ユダヤ主義を監視し
是正させることを目的とした圧力団体です。自らもユダヤ人である
ヨアブ・シャミール監督は、早速この団体の本部の取材を敢行。
映画の序盤にして、彼らの収集する「被差別事案」が拍子抜けする
ほど僅かで、しかも内容も「祝日に働かされた」など些細なことが
明らかになります。監督も我々も、「え。なにそれ」という感じに。

しかしそれでも「反ユダヤ主義は世界中で盛り上がっている!
ゆゆしき事態だ!」と各国に乗り込んでいき、首脳たちに異様な
上から目線で取引をもちかけるADL。露骨な「被差別利権」に
よって誰かが得をしている、という闇の部分をガッツリ映像に
撮ってしまっているんですね、この監督。実際問題、ADLの本部は
家賃の高そうなニューヨークの立派な高層ビルにあるし、各国を
遊説する幹部たちはみんなおカネのありそうな身なりをしてます。

いったいぜんたい、「差別」を作り出してるのは誰なんだ?

映画の後半、リベラル派のユダヤ人大学教授らは「反ユダヤ主義
なんてもんは、今やADLの連中の頭の中にしかない」とまで断言
してしまいます(そして職を失い、イスラエルに入国できなく
なってしまいます)。

差別をなくすことをお題目に活動しているはずが、実は差別がなく
なるといちばん困るのがこの連中だったりするというグロテスクな
矛盾。あー、どっかの国でも聞いたことあるわ、こんな話。

一方シャミール監督は、ポーランドやドイツのホロコースト跡地の
見学ツアーに行く学生たちの「修学旅行」に同行します。これがまた
異常。

子供たちはせっかくヨーロッパに来たというのに、「ホテルの外は
ネオナチがたくさんいて君たちを殺そうとしている。絶対外には
出ないように」と部屋に軟禁状態。もちろんよほど変な集会にでも
行かない限り、外にそんな人はいません。しかし子供たちは信じ
ちゃってるんですね。「ここは今もネオナチの国だ」って。

そしてホロコースト記念館みたいなところで祖先の悲惨な姿を見せられ、
何を学ぶか。「祖先はこんな酷い目にあったんだから、パレスチナ
人なんか大して悲惨じゃない」「ナチを殺してやりたくなった。
まだ奴らの子孫が生きてるし」と言い出すわけです。先祖の苦痛を
憎悪に転化することを学ぶんですね、イスラエルの子供たちは。

松島・町山両氏もコメントしてましたが、これ、洗脳ですね完全に。
「他者との接触を断ち」「外の世界は憎悪に満ちていると教え込む」
この2点の刷り込みは、すべてのカルトが信者にやっていること。

この映画の冒頭は、イスラエルの大新聞の紙面の紹介から始まります。
紙面の至る所に「世界中で反ユダヤ主義勃興!」という活字が踊ります。
これってホント? という質問に、収容所帰りである老編集長は吐き
捨てます。

「客観的かどうかなんてどうでもいいんだよ。ジャーナリズムなんて
クソくらえだ」

なるほどねー。イスラエルという国についてモヤモヤしていたことが、
ほんとにスッキリとする映画でした。

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