スタチャで『クライシス・オブ・アメリカ』

Posted at : 2006年 / 08月 / 31日
面白かったなあ『クライシス・オブ・アメリカ』。


60年代の映画『影なき狙撃者』(わし未見)のリメイクだそうで、
もともとは共産圏国家による洗脳・遠隔催眠によるテロリズムの
恐怖を描いた映画。ドン・シーゲルの『テレフォン』も同じネタ
ですな。昔読んだフェントン・ブレスラーの『誰がジョン・レノン
を殺したか』(今は学研文庫から出てるそうな)という本も
同じ題材でした。

もっともこの最新リメイクでは、黒幕の存在自体が巨大なナゾに。

主人公マルコ少佐(デンゼル・ワシントン)は複数の特殊部隊を
経験した歴戦の軍人。だが今は湾岸戦争症候群で向精神薬が
手放せない。しばしば夢やフラッシュバックで見るおぞましい
光景に悩まされている。

一方、同じ部隊で死線を潜り抜けた戦友ショー(リーヴ・シュレイバー)
は、豪腕政治家である母親(メリル・ストリープ)の庇護の下、
着々と政界の階段を上り、若くして保守派の星として副大統領候補に
なろうとしていた。湾岸戦争で部隊を救った英雄という経歴をひっさげて…

だがショーは、マルコの夢にたびたび登場していた。戦場の英雄ではなく、
同僚を残酷に殺す殺人者として…。大統領選挙を直前に控え、テレビに
映る華やかなショーの姿を見るたびに、マルコの言い知れぬ恐怖感は
日々高まっていく。あれは幻覚なのか、それとも…?

ある日マルコは、自分の肩のうしろに小さな違和感があるのに気付く。
皮膚の下に何かある。ナイフを突き立て、皮膚の下から取り出された
それは、小さな金属製のインプラントだった…

『羊たちの沈黙』のジョナサン・デミは、ポリティカル・サスペンス
というより、息詰まる狂気が支配するサイコ・スリラーとして
このリメイクを仕上げた。なにしろヒーローのマルコ自身が常に
幻覚と妄想に悩まされている男。必死に社会の狂気を暴き出そうとする
が、第三者には彼自身が狂っているようにしか見えないところが
なんともコワイのだ。

物語が進むにつれ、マルコだけでなく、すべての登場人物が静かに
狂っているように見えてくる。ショーもまた、夢と幻覚に悩んでいるし、
その母が息子に託した野心と愛はほとんど近親相姦的ですらある。
時おり現れる軍の査問官(ミゲル・ファラー)の非現実感、マルコに
近づく謎の女ロージー(キンバリー・エリス)の奇妙な現れ方…
全てが芝居がかっていて、誰もが陰謀に加担しているのような
恐怖を見るものに感じさせる。デミ監督の手腕がここに冴え渡っている。

物語のキーパーソンであり、マルコとショー二人の夢に現れる
怪医師(サイモン・マクバーニー…マンガ『MONSTER』に登場する
ボナパルタを想起させる)が結局殺されも逮捕もされず、そもそも
実在の人物だったかさえ明らかにされないところも不気味な余韻を残す。

脇も豪華。ショーのライバル議員役に最近名脇役ぶりが目立つジョン・
ヴォイト、洗脳の専門家としてマルコに助言するドイツ人技師に
ブルーノ・ガンツ、『羊たち…』の変態殺人鬼バッファロー・ビル役、
最近はドラマ『名探偵モンク』のストットルマイヤー役でもお馴染み
テッド・レヴィンも台詞ほとんどない役でチラッと出てます。

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